桜が柔らかく優しい雲のように咲いています。
遠くの景色に眺めても、近くに見上げても、桜はこの世界に温かく優しさを放ち、私たちを包んでくれるように感じます。誰でも皆、うきうきした幸せな気持ちになりますね。

「桜 切る馬鹿、梅 切らぬ馬鹿」という言葉がありますが、昨今では花や葉の落ちるのがわずらわしいとか、毛虫がいやだとかいう理由で、美しく伸ばした桜の腕や頭を切り落としてあるのを見かけます。

ずっと以前に仕事で歩いていて、生まれてから一度もどこも切られたことのない桜の、ちょうど満開の姿に出会ったことがあります。駅からほど近い商店や住宅の間の空き地に、その木は立っていました。樹齢何百年という木ではなく、若めの木でしたが、ふっと開けたその光景に思わず息をのみました。

大きく姿良く枝を伸ばし、匂うような満開のうす桃色をまとい、音もなく花びらをひらひらと散らしていました。その時の気持ちを、どう表現したら良いのかわかりません。輝いているその光景に、感動・陶酔・敬い・・そのような種類の気持ちです。

だぁれも人のいない空き地のその光景は、小さいながらもこの宇宙の在り方を表現していたのだと思います。私は長いこと動けずに、その美しさに見とれていました。