虫というのはまた、今の私たちが苦手とする生き物です。人とはまったく違った形をしているためと思われます。コオロギや蝉、蛍や蝶などは良いけれど、ハエ・蚊・蜘蛛・ゴキブリその他受け入れられないと感じる昆虫は多々あります。

けれどもそれは人が嫌と(勝手に)感じるだけであって、この地球上の生態系の中にあっては各々重要な役割を担っているから存在しているのです。人が病気を媒介すると考えて嫌うハエですが、その幼虫は腐ったものを分解して土に戻すという重要な役割を担っています。

戦争などで負傷した兵士の傷口に付いた蛆は、兵士に痛みは与えずに、膿んで壊死した壊疽を起こす細菌を含んだ肉を食べ、傷の回復を早める物質(抗菌性物質)を分泌してくれるので、蛆のわいた大半の兵士が手足の切断を免れたということを、どれだけの人が知っているでしょう?

成虫のハエの飛行スピードは速く、古代の文化では尊敬を集めていたそうです。古代エジプトの文化では、象牙や銅や金で作ったハエを戦いの武勲や報償として兵士に与えたそうです。また北アメリカのブラックフット族の間でも、捕まったり殺されたりせずに敵を攻撃するハエの能力を褒めたたえ、選ばれた兵士たちだけがその能力と一体化できるとされたそうです。

テレビの宣伝でたたき込まれた虫の印象は、非常に強く、当たり前のこととして受け入れていますが、それらの存在は必要だからあり、彼らはこの地球上で必要な任務を果たしているという敬意をもたねばならないのです。いなくなれば、困るのは私たち自身なのですから。虫はまた、多くの動物たちの食べ物でもあります。全てはつながっているのです。

「昆虫 この小さきものたちの声」ジョアン・エリザベス・ローク著