久しぶりに伊豆へ戻ってくると、やはり何もかもが新鮮で嬉しく感じられます。空気に含まれる土や木の湿った香り。透明な清々しさ。そして何より虫や蛙の声。朝、ヒタキの声で目覚め、散歩に出かけました。

陽が出たので、山は沢山の鳥の声を放っています。写真を撮ってもこの感動は伝わりません。山の木々から何種類もの鳥の声があふれ、降ってくる感動! 鳥たちのさえずりは、そのまま命の賛美であり、何よりも私たちの喜び、弾む気持ちの一日の始まりになります。

かつては茅ヶ崎にも素晴らしい自然はありました。海風に鳴る広大な松林、6月に甘い香りの乳白色の花房をつけ、秋に金色の葉で地面を埋めたニセアカシアの林。蛙やカニ、亀さえも歩いていることがありました。その頃、鳥はどれほど居たのでしょう。

それを持っているときには、当たり前のこととして享受し、失って初めてわかるのでしょう。その土地のもっているスピリットがあります。そこに住んでいるひとは、自分というひとつの物体ではなく、皮膚にくるまれている体というところでおしまいではなく、その土地のスピリットと深い結びつきをもっています。

私たちは自分の住んでいる場所の自然と、切り離しようもなく結びついて生きており、そのつながりなしでは自分の寄って立つ基盤・誇りといったものも失われてしまうのです。それがあって初めて、文学も音楽も絵画も生まれてくるのだと思うのです。
目先のお金や都会化で物事を判断せず、私たちの子孫に私たちの基である自然を残していって欲しい。そのような理念ある行政であって欲しいと願います。